暑い夏に、今年もアイスのあずきバーが売れています。また、そのあずきバーをめぐり、ある有名人が漏らした一言が、ネットで話題となりました。
また、今年はガリガリ君もあずき味のスペシャルバージョンを販売することとなり、予想外のあずきアイス対決となっています。
スペシャルなガリガリ君、1本に甘納豆30g「ずっしりあずき」
https://www.excite.co.jp/news/article/Narinari_20190806_55800/
エキサイトニュース 2019/8/6
そのような、あずきをめぐる話題が飛び交うなか、老舗の餡子メーカーが出した商品が、ロングセラー商品として、じわじわと支持を広げ続けています。
「あずき美人茶」という商品です。
製造・販売しているのは、遠藤製餡という、1950年創業の餡子メーカーです。2002年に、業界で初めて、あずきのお茶を販売しています。
あずきは健康に良いということが知られていますが、健康的に美人になるお茶として、ブランド・コンセプトを設定しているところが、この商品の特徴です。
製餡で培った、コア・コンピタンスの技術力を活用し、新たな商品開発につなげるという王道の経営戦略が、この商品に活かされていると思われます。また、思い切ったネーミングがうまく商品機能と合致していると感じます。
機能性を謳う商品は、具体的なイメージを顧客に持たせることが必要ですが、その反面、薬事法などの法令の関係で、厚生労働省などの許可を得ずに、具体的な機能を表示させることはできません。そのため、ネーミングや販促方法については、慎重かつ効果的な内容が求められます。
そういった点で、「あずき美人茶」というネーミングは、ブランド・コンセプトとして、優れていると考えられます。
販路についても、無理には拡大させず、ナチュラルローソンや駅のコンビニ、または自社運営のオンラインショップ等で販売することで、値崩れを防止し、自社商品のブランド価値を保つことに成功しています。
その一方、確かな技術力と優れた商品を持ちながら、マーケティング戦略がうまくいかず、苦労して生み出した自社ブランドの商品価値が顧客に伝わらない例も散見されます。値崩れを起こし、ブランド価値を毀損してしまったり、そのまま廃番となってしまったりするのです。
いい商品を作れば顧客に喜んでもらえるのは確かですが、そもそも、顧客にいい商品であるということが伝わらないと、顧客にその商品を選んでもらうことができません。ましてや、ブランド力がない企業であれば、なおさら顧客から選んでもらえる可能性は低くなってしまいます。
そのためにも、自社開発商品でブランド力を獲得するためには、ロングセラー商品として継続的に商品を育成するつもりで、長期的視点に基づき、地道な改良と改善を図っていくことが、必要となります。
今回取り上げた「あずき美人茶」は、2010年に発売されたものですが、2002年に発売された「あずき茶」をリニューアルしたものなので、実は17年間をかけてブランドを磨いてきたロングセラー商品です。
継続的にブランドを磨く努力の結果が、現在の顧客支持の獲得に至っている好事例だといえるのではないでしょうか。
武川 憲(たけかわ けん)執筆
一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 シニアコンサルタント・認定トレーナー
株式会社イズアソシエイツ シニアコンサルタント
MBA:修士(経営管理)、経営士、特許庁・INPIT認定ブランド専門家(全国)
嘉悦大学 外部講師
経営戦略の組み立てを軸とした経営企画や新規事業開発、ビジネス・モデル開発に長年従事。国内外20強のブランド・マネジメントやライセンス事業に携わってきた。現在、嘉悦大学大学院(ビジネス創造研究科)博士後期課程在学中で、実務家と学生2足のわらじで活躍。
https://www.is-assoc.co.jp/branding_column/