Case Study

経営戦略を具現化するブランドビジョンの意義  ーセブン&アイ・ホールディングスの中期経営計画を考察【前編】

投稿日:2021年9月10日 更新日:

日本全国・海外で流通小売業を展開するセブン&アイグループが、新規の中期経営計画を発表しました。

セブン&アイ/新中計、北米事業けん引しEBITDA1兆円・ROE10%目指す

中計では、セブン‐イレブン事業を核としたグローバル成長戦略の推進に加えて、2023年度をめどに国内事業構造改革、期間後半DX・金融戦略などに取り組む。

計画最終年度の2025年度はEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)1兆円以上(2020年度6268億円)、営業キャッシュフロー8000億円以上(同4567億円)、ROE10%以上(同6.8%)を目指す。

井阪社長は「コロナ禍で、個社の取り組みでは世界の変化のスピードに対応できないとグループ内で意見が一致した。今回、個社の目標数値は内部だけで持ち外部に公開せず、グループ全体最適を図る中計とした。北米事業の強化、国内コンビニの再成長に向けた店舗改革、グループの力を結集した食品事業の拡充、ネットコンビニ・ネットスーパーといったラストワンマイル事業に注力する」と説明した。

グループの成長ドライバーである北米事業については、スピードウェイ事業との早期シナジー効果の発揮、チームMD・フレッシュ・フード工場併設型共配センター開設といった食品の強化、コールドプレスジュース、クラフトビール、インストアベーカリーなど楽しめる高質店舗の拡大などを推進する。

2025年度には1万5000店舗、フレッシュ・フード売上構成比20%超、デリバリー対応店舗約6500店舗を目標に設定した。
グローバル事業では、日米連携によるセブン-イレブンのグローバルブランド価値向上に取り組む。
既存国のライセンシー連携強化プログラム、新地域への出店促進で、世界に質の高い店舗を5万店舗規模に拡大する考えだ(2020年度3万9000店舗)。

国内コンビニ事業は、コロナ禍と以前から続く社会構造の変化に対応し、小商圏化に合わせた売場レイアウトへの変更、出店再加速への基盤構築、次世代型店舗の開発・テストを行い、ネットコンビニを拡大する。
オープンケースなど導入した「新レイアウト2020」は、2021年度末までに1万2000店舗に、上部にブリッジ什器を設置するなど狭小の都心店舗への対応は1500店舗で実施する。

また、ネットコンビニは北海道約120店、広島約150店、東京約80店(世田谷・中野・品川・池袋)と2021年2月末で約350店舗に導入している。

AI活用による配送リソース・ルートの最適化などを実現するラストワンマイルDXプラットフォームの採用で、ネットコンビニを強化。2021年度末までに1000店舗でのテスト運営、2025年度には全国展開を完了、営業利益を5%押し上げる見込み。

さらに、連結グループ国内売上約7兆4600億円(2020年度実績)のうち、食品売上は約4兆6700億円と、食品事業が6割強を占めている。食品領域における売上増、グループのシナジー効果をより高めるため、海外調達の促進(直輸入)、原材料・レシピの共有、プロセスセンター・セントラルキッチンの共同運営、生鮮などの共同調達などを行う。

グループの共同インフラとして、セントラルキッチン2カ所・プロセスセンター2カ所を2025年度までに稼働予定だ。

(流通ニュース 2021年7月1日配信記事)
https://www.ryutsuu.biz/strategy/n070120.html

 

中期経営計画は、企業の経営戦略や方針を社内外に対して示す、重要なものです。

しかし、昨今では外部環境の移り変わりの早さに対して、対応がしにくいという観点から中期経営計画は不要であるという意見もあるようです。

ただ、取引先や社員など、利害関係者に対して会社の方向性や、それに基づく戦略などを一切発表しないというのは、その企業は何の主体性もない企業であるという認識をされかねず、社会的信用を得にくくなる可能性があります。

ましてや上場企業であれば、投資家から無責任な経営をしている無計画企業だと非難を浴び、株価にも悪影響を及ぼしかねません。
一般的には、企業の成長のためには戦略が必要であり、戦略を実現するためには何らかの投資が必須となります。

その投資内容すら公表できないのは、株式を発行して株主から資本を集め、集めた資本を事業へ投資して、その収益を株主へ配当することで成り立つ、株式会社という企業形態自体を否定することになります。

もしそれが上場企業であれば、なおさら投資家などのステークホルダーからの視線を気にかける必要があり、それができない場合は経営陣の退陣を要求される恐れすらあります。

ステークホルダー資本主義という概念が2020年1月のダボス会議で発表されましたが、これは近年もてはやされてきた株主資本主義からの脱却を図った世界的な資本主義の理念であり、世界の潮流になりつつある概念です。

ステークホルダー資本主義とは・意味

1.エコロジー
気候変動のリスクに対処し、生物多様性を守る対策を林床や海底まで行き渡るように実施するため、いかにして企業を動かすか。

2.経済
長期債務の負担を取り除き、インクルージョンの水準をより上げられるようなペースで経済を機能させていくにはどうしたらよいのか。

3.テクノロジー
第四次産業革命のテクノロジー展開について全世界的なコンセンサスを形成し、かつ「テクノロジー戦争」を回避するにはどうしたらよいのか。

4.社会
これからの10年間で10億人の人々にスキルを再習得させ、向上させるにはどうしたらよいのか。

5.地政学
世界各地の紛争解決のために、「ダボス精神」で橋をかけていくにはどうしたらよいのか。非公式会合で和解を促進していく。

6.産業
第四次産業革命で事業を推進していくためのモデル構築において企業を支援するにはどうしたらよいのか。政治的緊張に晒され、飛躍的なテクノロジーの変化やすべてのステークホルダーからの増大する期待に動かされる世界で、どのように企業のかじ取りを行っていくのか。

(出典:IDEAS FOR GOOD
https://ideasforgood.jp/glossary/stakeholder-capitalism/

 

これらのような、株主重視からステークホルダー重視への潮流がある社会環境では、企業の方向性を可視化して、対外的に示すものが必要となります。
その役目を担うものが中期経営計画であるとすれば、これは決して意味のないものではないと言えるのではないでしょうか。

 

では、中期経営計画について検討してみましょう。

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